海にルチル

深い青の乱反射
足りない勇気を理由に
僕はいつまでも、海を渡れない

ひるがえる波の唸りは
幾つもの想いが
重なりあってきしむのに似ている
いつか君の胸もとから
これと同じ音がしたよ

伝えたいことがあるんだ
二度と会えない君と
交わしそこねた約束があるよ

思いがけず空が高くて
きらめく雲のきれはし
波間の風、魚かと思った

重ねた指のやさしさ
未だその記憶を抱いて