残り香

舌先で踊る
駄々の味の音符
雨垂れの夜に
命からがらすがる歌詞の
一人称はなんでもよかった

指先に残る
ブルー ドゥ シャネルの体温
花曇りの朝は
未練たらたらあふれる涙の
涸らしかたを教えてくれた

ともかく彼奴の笑い声が
僕らを痛めつけるのは確かだ
張りつめた自意識が
愛を消耗するのと同じで

僕らの愛は有限で
無駄を打つ余裕などなく
使い捨ての夢に
賭ける義理もなかった

たかが生まれ変わるのに
どれほどの月日を費やし
幾度過ちを繰り返せば
真の痛みを味わえるの

未遂の春に硝子の花びら
破片に傷つく心の移り香